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ハロウィン

ハロウィンで小説書くと言っていたのにハロウィンとっくに過ぎてしまいました。
ごめんなさい。月末の忙しさをなめていました。妙に忙しかったです。
しかも書き終わったは良いけど予定とはだいぶ外れた内容になってしまいました。
バルアミーもリディアもフランシアも出せなかったのが心残りです。

続きを読むからどうぞ。






ウラニボルグにおいては常に空調管理されていて、四季の移り変わりを肌で感じることはできない。だからこそ、季節ごとの行事はそれなりに大事にされている。
そして10月末の行事と言えばハロウィンである。
ハロウィンと言えばその昔地球で大いに栄えた一宗教の行事であるが、もちろんタイタニアに信じるべき神などあるわけもない。よって行事の正しい意味は忘れ去られて久しく、現在は『仮装』や『菓子』等のキーワードが残るのみである。それにどんな意味があるのかなど、誰も気にはしない。
さてタイタニアとは強固な血族のつながりによって保たれており、家長たる者は一族を取りまとめるための責任がある。それ故、家長は一族の見本たるべく儀式や行事等を率先して行わなければならない。
重ねて言う事になるが、ハロウィンである。よってその日の五家族会議の会議室は、普段とは違った風景になっていた。
もちろん内装は変わらない。変わるのは、そこに集う若き公爵四人の姿である。
普段は四人とも軍服を着用している。立場上常に正装を求められる彼らは、それこそ自宅以外の場所でそれ以外の服装を見せることはない。しかしその日一日に限っては彼らは軍服ではない姿を見せる。
誰も彼もが仮装をしなければならないというわけではないが、家長たる公爵たちには行事を率先して行う義務と責任があり、よってハロウィンの仮装も義務の一部とみなされていた。
最も、普段が常に軍服である以上、何を着ても仮装のようなものかもしれないが。


アリアバート・タイタニア。無個性と冷評を浴びがちな美貌を持つ彼は、白い肌をさらに白く、どちらかと言えば青白いまでの化粧を施して、唇は異様なほどの赤さに塗られている。その対比は人間離れした美しさとおどろおどろしさを同時に印象させた。肩から下の全身を覆う闇夜のように黒いマント。総合して吸血鬼の仮装で間違いないだろう。
牙でも生えていそうなほどに赤いその唇は、しかし口を開けても当然牙など生えていなかった。
「今年はアリアバート卿が吸血鬼か。去年とは逆だな。」
ジュスラン・タイタニア。彼が纏う衣装は、アリアバートと同じくほとんどを黒に支配されているが、しかしアリアバートが退廃の種族の仮装であるのと対照して、禁欲的な聖職者のものである。それが印象的な深い光を湛える瞳と相まって、どこか蠱惑的ですらある。
よく似合ってはいるが、本来の意味からすればその仮装はあまり正しくない。
ハロウィンとは悪霊などを払う行事であり、だからこそ悪霊や化け物等の格好をするのが正しい姿である。
しかし対してジュスランの格好と言えば、化け物や悪霊などとは対極の、宗教の聖職者の格好なのである。さらに言うならその宗教こそがハロウィンの起源であり、これはもう皮肉ですらない。
だがもう既に形骸化された行事の意味を考える者はほとんどおらず、今では仮装ならば何でも受容されるようになっていた。
「そう言えば、去年はジュスラン卿が吸血鬼であったな。」
去年はアリアバートが聖職者の仮装をした。白金の髪に黒い衣装はよく似合っていて、ロザリオを持つ仕草は様になっていると評判だった。
対するジュスランは、今日のアリアバートのように全体として黒い衣装に全身を覆うようなマントを着ていた。
「ああ。化粧まではしていなかったが・・・」
アリアバートは一瞬顔を撫でたそうな仕草をして、結局触れなかった。
「メイド達が寄ってたかって塗りたくったのだが、どうもこの日になると張り切りすぎるようだ。何でも、水でも汗でも落ちない化粧品らしい」
「よく似合っている。しかしどうやって落とすのだ?」
ジュスランの疑問はアリアバートの疑問でもあった。クレンジングがどうとかいってはいたが、アリアバートには何の事だかわかりはしない。
「さあ・・・おそらく専用の薬剤などがあるのだろう。」
まあしかし、本当に落ちないものを主人の顔に塗りつけるようなまねはしないだろうし、アリアバートも別に心配はしていなかった。
そんな事より気になるのは、先ほどから同じ部屋にいるのに一言もしゃべらないでいるイドリスだ。
ザーリッシュも今日ばかりは無口になっているが、そればかりは毎年恒例の事なので気にする程の事もない。
「イドリス卿、そう剥れるな。」
「剥れてなど・・・!」
反論するイドリスであるが、せっかくの美貌はしかめっ面でその価値が半減している。最後にサロンへやってきたイドリスは、アリアバートの仮装を見た瞬間から不機嫌であった。
イドリスの仮装は、アリアバートのものとほぼ同じだったのだ。イドリスは化粧までは施しておらず、特殊加工で犬歯を牙のように尖らせていたが、細かな違いはあれどアリアバートと同じ吸血鬼の仮装であった。


何故被ったのか。それには公爵たちの知らない水面下でのある出来事が原因である。
実は公爵たちの仮装はそれぞれの使用人たちが勝手に決めている。
勿論主人の希望が最優先されるが、主人が希望を出さない限りは使用人が好きに決めてよいのだ。
であるからこそ、ジュスランとアリアバートとイドリスの仮装は、使用人(特に服飾に興味の強いメイド)が互いに連絡しあい、相談しあって重ならないようにしている。
しかし今回に限って意見の一致を見なかった。
アリアバートのメイド達は、今年は絶対にアリアバートに吸血鬼の仮装をさせると去年から熱を燃やしていた。
だが、イドリスのメイド達も、今年こそはイドリスに吸血鬼の仮装をさせると言い出したのだ。
吸血鬼の仮装は定番中の定番であり、それだけ人気も高かった。
ジュスランとアリアバートのメイド達は、アリアバートとジュスランの仮装をそろえる事に毎年熱中していた。例えば片方に天使の格好をさせたら、もう片方には悪魔の格好と言った具合に。だから、ジュスランのメイド達もアリアバートのメイド達の味方に付き、多数決で負けそうになったイドリスのメイド達であったが、頑として譲らず交渉は決裂してしまったのだ。



「大体、去年のジュスラン卿と同じ衣装を用意するとはどういうことだ。今回の衣装担当には厳重に注意しておかなくては・・・」
イドリスの愚痴に、ジュスランは反論した。
「私はそんなにフリルはついていなかった。」
アリアバートも同意する。
「私のにもそんなにフリルはついていない。」
アリアバートもイドリスもおおよそ似た格好であったが、イドリスはマントにも、中の服にも沢山のフリルがあしらわれていた。勿論ほとんどが黒なのでそれほど派手さはないのだが、うっかりすれば女性物にすら見えかねない。それをちゃんと男性らしく見せているところがメイド達の拘りなのだろう。
「黙っていてもらいたい。私の美貌にはどんな服だろうが似合う。
まあ、ザーリッシュ卿のような格好は流石の私にも着こなせる自信はないが・・・」
イドリスはちらりとザーリッシュを見て行った。
「馬鹿にするのか」
そう言ったザーリッシュの言葉には普段の迫力もない。
毎年この日はいつも意気消沈としているザーリッシュだ。
「よく似合っておられる、ザーリッシュ卿。」
取りあえずジュスランは褒めた。似合っている事には確かに似合っている。ザーリッシュ以上にその衣装を着こなせる者はいないだろう。
「そ、そうだ。よく似合っている。それに去年の熊の着ぐるみよりはマシなのでは・・・」
アリアバートの微妙なフォローに、ザーリッシュの気持ちはさらに沈んだ。
ザーリッシュの今年の仮装は、何でも地球時代の一地方の民間伝承に伝わる化け物の類らしい。その名を『鬼』と言う。
切り口がザンバラで袖のない虎柄のジャケットを素肌に着て、やはり虎柄の腰蓑を纏っている。逞しい太腿が目に眩しい。目の毒だ。正直見たくない。それより気になるのはそれで狙撃されたら一発ではないか。危険すぎる。
オプションとして頭には短い角が左右についている。絶対に必要だからと持たされているのは太いとげとげの棍棒だった。
「そんなに嫌なら、断ればよろしいのでは?」
とイドリスは気軽に言うが、ザーリッシュからすればそんな簡単な事ではない。
「毎年気がつけば『良い』と言わされているのだ。」
ザーリッシュの仮装を決めるのは毎年愛人達であった。彼女達は何も権力に縛られザーリッシュの元にいるのではない。彼女達なりにザーリッシュに対する愛情があるのだ。しかしザーリッシュにとってあまり嬉しくない事に、愛人達の愛情は何処かマニアックであった。
去年の熊の着ぐるみは、聞こえだけはファンシーであるが、実際にはそんな可愛らしいものではなかった。熊の毛皮をそのまま使用しているかのようにリアルなつくり。爪と牙は鋭く、顔はいかにも人一人くらいは食った事のありそうな凶暴さであった。そして着ぐるみの口は大きく開かれていて、ザーリッシュはそこから顔を出していた。着ぐるみを着ているというより熊に食われているようにも見えた。
仲違いする事もある愛人達ではあるが、このときばかりは団結してザーリッシュに好みの衣装を着せたがるのである。
「気落ちされるな、ザーリッシュ卿。そろそろ藩王殿下がいらっしゃる。」
ジュスランの言葉が予言になったかのように、それから10秒と経たずアジュマーンが入室した。
アジュマーンは仮装はしていない。アジュマーンはホスト役であり仮装は必要ないのである。
「トリック・オア・トリート」とは流石に言わない。しかし、普段は飲物すら用意されない会議室にこの日ばかりは菓子と紅茶が用意される。藩王の計らいという趣向になっている。
だが四公爵の格好がおかしかろうと、そこに子供の好みそうな菓子が用意されていようと、会議の内容はいたって通常通りであった。
優秀な五人は速やかに会議を進行し、恙無く終わらせた。
常の通り藩王を見送り、残された四人はそれぞれ会議室を後にする。アリアバートも出て行こうとすると、ジュスランが呼び止めた。
「アリアバート卿、この後時間はあるだろうか?暇なら良い紅茶が手に入ったのでお茶でもと思うのだが・・・」
ジュスランの誘いを、アリアバートは快諾した。
「ああ。お言葉に甘えさせてもらおう。」
と言うわけで、アリアバートはジュスラン邸に招待されたのであるが、知らせを受けたバルアミーは「何故そんなに暇なんだ!もっと他にやる事があるだろう!?」と一人憤っていた。


花の見える庭先で、ジュスランとアリアバートは優雅に紅茶を楽しんでいた。フランシアとバルアミーが給仕であるが、バルアミーは滅多に姿を見せない。
「ジュスラン卿、バルアミー卿の格好は一体・・・」
アリアバートの疑問は、予想の範囲内であった。
「リディア姫のたってのご希望だ。」
とんがり帽子の可愛らしい魔女の仮装をしたリディアは、顔を象ったカボチャを屋敷中に飾るとあちこち飛び回っていた。
「よく似合っていると思わないか?」
確かに良く似合っている。似合っているが、流石にちょっと気の毒になる。
バルアミーはドレスを着ていた。しかも化粧までしていた。
アリアバートとは違って、バルアミーの化粧は女性的に美しく見せる為のもので、それは確かにバルアミーの美貌を引きたたせてはいた。
アリアバートは一瞬どこのご婦人か、ジュスランの新しい愛人かと考えたほどで、声で女装させられたバルアミーだと気づいたのだ。
(ジュスランに尋ねる前でよかった)
「しかし、ドレスは動きにくいのではないか?仕事にも支障をきたすのでは?」
アリアバートはバルアミーに同情していた。
「大丈夫だ。リディア姫とフランシアが写真を撮ろうとしたら、全速力で逃げ回っていた。」
アリアバートはますます同情した。


その晩の反応主催のパーティーで、一番の注目は、結局ドレスを脱ぎそこなったバルアミーであった。
その美しさはその場のどのご婦人より勝っていたと後々まで評判になったほどである。


   後書
リディアもバルアミーもフランシアも出し損ねました。
四公爵から始めたら、なんだか力尽きてしまいまして・・・。
アジュマーンの描写が少なかったのは、アジュマーンを出したとたんに18禁の方向にもって行きたくなるからです。
最近本当に18禁ばかり書いていたのでリハビリが必要のようです。



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