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時期外れ

大変久しぶりの更新になります。
一応1週間前には帰っていたのですが…。
待っていてくださった方には、本当にどうもすみませんが、今回の小説は、前回宣言した「身勝手な欲望」の続きではありません。「すっぱいぶどう」でもありません。今更で時期外れですが、バレンタイン小説です。
せっかくのバレンタイン小説ですが、カップリングはないです。
しかもアリアバートと名もない部下しか出てきません。
短いです。
続きを読むから開きます。





糖分は脳を活性化させる



日付の変わる音を聞き、未だ山積みの書類を見て溜息をついた。
今日中に終わるとは思っていなかったが、この分では朝日を拝む羽目になりそうだ。
体のコリをほぐすために少し伸びをして再びデスクに向かう。
この書類の山を作る羽目になった事件と、それを引き起こした部下の無能を呪えども、書類の山が減るわけでもなく、仕方なく延々と続く作業に戻った。
書類まみれのデスクの一角、そこだけ書類の置かれていないほんの小さなスペースに、できる限り音をたてないよう丁寧に小さな皿が置かれる。クリーム色の皿にはいくつかの包みが置いてある。
アリアバートはそれを持ってきた部下を見て、尋ねた。
「これは?」
「チョコレートです。」
チョコレートは心身に安らぎを与え、疲れた脳を活性化させる。
気の利いた部下もいる事に嬉しくなり、その包みを一つ取って口に含む。カカオの香りと品の良い甘みが口に広がり、滑らかな舌触りはどこか名店の品かも知れなかった。
「ありがとう。良い部下を持って、俺は幸せだな。」
そう言って微笑むと、部下は真っ赤になって
「いえ、そのような」
としどろもどろに答えた。
最近になってアリアバート付きになった者だから、まだ慣れぬことも多いのだろう。時々こうして受け答えに詰まる事もあるが、大凡優秀な部下と言えた。これからが楽しみだ。
若者の明るい未来予想に癒されて、アリアバートは再び書類に向かった。時々チョコレートを摘みながらの仕事は、部下の的確なフォローもあり、何とか朝日を拝む前に終わらせる事が出来た。



明け方ようやく帰ってきた同期の同室者は、目の下に隈を作って、嬉しそうな顔をしいる。
「おい、どうしたんだ幸せそうな顔して。貫徹の仕事にじゃなかったのか?」
疲れの色濃いその顔は、しかし幸せな雰囲気が滲み出ている。
「アリアバート様にチョコを召し上がっていただいたんだ。」
「それはもしかして、お前がこの前3日かけて作っていたあのチョコレートかの事か?」
思い出すのは、この同僚が部屋の台所を3日も占領して甘いにおいを漂わせていた事だ。料理をすることはないので台所が使えないのは全くかまわないのだが、3日間続いた甘ったるいにおいには辟易させられた。
それにしてもアリアバートがまさかそんな怪しげなものを口にするはずがない。
「まさか、嘘だろ?」
「本当だ。お疲れの御様子だったからチョコを出したら、仕事しながらあの長い指で一つずつ全部食べてくれた。」
この同僚がアリアバート様に心酔している事は知っている。優秀な彼は数多のライバルを押しのけてその若さでアリアバート直属の地位を手に入れたのだ。
タイタニア一の武勲を持つアリアバートは、入隊前からの憧れであった。入隊して、アリアバートの配下に配属され、その武勇や人柄を見るたびに、尊敬の念は深くなるばかりだ。
同僚ほどの情熱と優秀さはないものの、アリアバートに憧れる気持ちはひそかに持っているので、思わず皮肉を言っていた。
「アリアバート様もお腹を壊さなければ良いな。」
しかしうっとりする同僚の耳には、嫌味も何も入ってこないようだ。
「おいしいって言ってくれたんだ…。」
幸せそうに眠りに落ちようとする同僚に、思わず枕を投げつけた。
しかし枕程度の攻撃では夜を徹して仕事していた同僚は起き上がりはしなかった。少し睨みつけられはしたが、その瞼はそのまま落ちて行ってしまった。
完全に寝入ったのを確認して、隠していた小さな箱を箪笥から取り出した。青い上質紙とサテンのリボンで上品にラッピングされたその包み。その中にはボンボンショコラが3個入っている。有名なチョコレート専門店に何時間も並んで手に入れたチョコレートだ。結局今年も渡せないだろうことはあきらかであったが、微かな期待を持って懐に入れた。
去年までは同僚も同様であったが、今年は彼は渡せたのだ。そして、うらやましい事に目の前で食べてもらったのだという。彼の話からすると、ひょっとするとアリアバートは彼からのプレゼントだとは気付いていないかもしれないが、それでも羨ましいことには変わりない。
同僚の優秀さと度胸の一欠けらでも欲しい。
そうしたら、せめて渡す事くらいはできるかもしれないのに。場合によっては受け取ってもらえるかもしれない。
きっと食べてはもらえないだろうが、チョコレートがアリアバート公爵のあの美しくも上品な口に入るところを想像するだけで、タイタニアに忠誠を誓って良かったと思えるに違いない。

時刻は早朝。バレンタインデーはまだ始まったばかりである。





   後書
部下は純粋なあこがれの感情です。
せっかくのバレンタインだって言うのに、書こうと思ったらこんな話しか浮かばなかった事が残念です。
でもアリアバートは部下にとっても好かれていると思うんです。それを想像すると萌えるんです。
きっとバレンタインには部下から沢山チョコを貰うに違いないです。
明日は雛祭り小説をアップ、できたらやります。
「身勝手な欲望」、続きは半分書いているのですが、うっかりまたアリアバートを怒らせて絶交宣言しそうな勢いになってしまっているので、中々オチまでたどり着けません…。

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